『太陽』を観てきました

本日は、かねてから観たいと思っていた映画『太陽』を観てきました。


「日本での公開は難しい」なんて言われていたためか、東京では銀座でしか
上映しておらず、何しろ混雑していました。
16時20分の回をターゲットに銀座に向ったのですが、いざ映画館に到着すると、
映画館前は長蛇の列、チケット売り場で確認したら次の回まで立ち見ってことで、
結局、2回後の18:45の回の指定席券を購入して観ることにしました。


感想ですが、かなり面白かったです。
でも、上映中あちこちからイビキが聞こえてきたことを考えると、
「誰もが楽しめる作品」とは言えなさそうです。


で、何が面白かったかって話ですが、個人的に感じた「面白ポイント」は3つ。


【1】イッセー尾形の絶妙な「モノマネ」
主役である昭和天皇を演じたのがイッセー尾形です。
この演技が絶妙で楽しめます。
何が絶妙なのかというと、そもそも僕はそれほど昭和天皇について知らないわけで、
厳密にはその演技が似ているかどうかはわからないのです。
でも、なんとなく特徴的な振る舞いをして「似ている感じ」に仕上げてある。
丁度、グッチ裕三がワケのわからない外人のマネをして「似ている感じ」にしているのと
一緒かと思います。(ホントか?)
で、観ている方は、これまで謎の多かった昭和天皇についてもっと知りたいから、
その「似ている感じ」のイッセーにどんどん引き込まれて行くのです。
物語の前半は「戦時中なのに、神として、決められた退屈な日常を過ごさなければならない天皇
を描いているのですが、それがフィクションとは思えないほどリアリティーがあり、
しかしどこか幻想的で、奇妙な感じがする、という「(おそらく意図的に)気持ち悪く」
作りこまれていて、なかなか目が離せませんでした。
もちろん「こんな演技して、イッセーさん大丈夫かな…」という「タブー的なものを見ている
ハラハラ感」も、”絶妙”という言葉には含まれています。
かなりギリギリの演技で、さすがはイッセー尾形といった感じです。


【2】”昭和天皇の苦悩と葛藤”というテーマ設定
昭和天皇の苦悩と葛藤”って書くと、わかり易く平凡なテーマのようにも感じますが、
実際、戦時中という時代背景だけでなく、当時の「天皇」の存在意義や、「神」として
振舞うことを義務付けられた日常生活、君主として「統治」できないが「国民への責任」
は持たされた立場の苦悩、父として夫としての家族への愛情など、様々な背景や前提を
踏まえない限り、このテーマを理解するのは難しいと思いました。
実際、自分もわかっていなかったし、今でもわかっていないし。
この映画の意義は、それらの背景を浮き彫りにし、考えるきっかけを作ってくれたところ
にあるように思います。
監督はロシア人ですし、監督自らが「この作品はフィクションである」と公言しているように、
ストーリーは、完全なる史実に基づいているワケではありません。
でも僕はそれでOKだと思います。
なぜならこの映画は、ドキュメンタリー映画ではないからです。


【3】映像
なにしろ映像がキレイです。映画の撮影技法については全くもって無知なので、
何によって、幻想的で、不安定で、美しく、奇妙な印象を受ける映像に仕上げられて
いるのかの分析はできないのですが、本当に素晴らしい映像でした。
個人的には、昭和天皇が地下壕で戦争が起きた原因について述懐し話し続けるシーンと、
アメリカ人に写真撮影をされるシーンが、映像的にとても好きでした。
村上龍の「五分後の世界」を映像化するなら、この監督にやって欲しいなぁ、
と思いました。


しかし誉めすぎですね。
でも、とても興味深い作品だったので、キチンと日記として感想を残して
おこうと思います。


マスコミも、いろいろと圧力などもあり、昭和天皇について深く報道することは
難しいのかもしれませんが、もっと昭和天皇を知り、そして1945年に終わった戦争
についてももっと知りたいな、と感じました。


「太陽」オフィシャルサイト
http://taiyo-movie.com/